街のかたすみに/寅午
 
とおりすぎた
吹きはじめた木枯らしからのがれるように
かの女は 林のなかの茂みのなかに身をひそめた
枯れ葉のつもる茂みはすこし温もりがあった
かの女はよろけるように茂みにもぐりこんだ

「 ご主人さま、あなたはどこにかくれているの、
  わたしはすっかり疲れてしまいました。
  こんな遊びはもうたくさん
  はやく、わたしをむかえに来て・・・

やがてかの女の身体は
茂みのなかで、コソリとも動かなくなった
ふとかの女は
カサカサ枯葉を踏みしめる音がちかづくのを
眠りのなかできいた

「 ああ、
  やっと、ご主人さまが見つけてくれたのだわ。
かの女は思った
そして、かの女の身体を
あたたかいものがつつむのを感じた
かの女はホッと 安堵の吐息をもらし
ふかい眠りにおちた



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