壁画/岡部淳太郎
 
僕たちは立っていた
路上に立ちつくして
いつ訪れるかわからない
僕たちをどこかに
連れていってくれるであろうものを
ひとすら待ちつづけていた
僕たちは整然と列を
乱さずに立っていた
僕たちはそこに大勢でいながら
それぞれにひとりきりだった
このあつまった孤独
その中で僕たちの残りの時間は
少しずつ削られていった
僕たちは立っていた
路上に立ちつくして
ひたすらに待ちつづけていた
もういくつの風が僕たちの
鼻先をかすめ僕たちの満たされない
願望を刺激したことだろう
そんなこともわからなくなり
僕たち自身が何者であったのかも
わからなくなって久しかった
僕た
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