蛇音/よーすけ
ように、栗須は独り言のように言った。そう言うことで自分が楽になる気がした。蝉がいっそう強く鳴く。
少年は落胆した表情さえ見せずに麻袋を掴み腐りかけの家に歩いていった。顔には何かが終わりを告げたように疲労感が現れ、目が虚ろになっていた。一歩進むたびに影の濃い方に溶けていくように見えた。
栗須も踵を返し竹林の中を出た。夏の光は強く彼の湿気た皮膚を炙り、視界を眩ませた。これが僕らの街に注ぐ光だ、と分かった。
傾斜のきつい下り坂を栗須は自転車でブレーキもかけず向かい風を裂きながら下った。彼は街にだんだん近づきながらも、自分と街との高低差がなかなか縮まらないのを疎ましく思った。街は平坦だった。
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