蛇音/よーすけ
と夏の気配を感じさせる熱と湿気を持った風が少年たちを撫でた。駐車場は薄く伸ばしたようにだだっ広く、規則正しく停められた車は一台一台が息を潜めた昆虫のように見えた。そうなるとここは虫の巣だ、と栗須は思った。
「じゃあ栗須、明日気合い入れて来いよ」
瑞嶋のその声によって栗須は放心状態を解かれ我に返った。彼らはそこで解散となり瑞嶋は自分の家の方向に自転車を走らせた。栗須はその光景をいくらか同情的な視線で眺めながら、明日もここに来なければならない事を疎ましく思った。何せ、明日は「パトロールの日」だからだ。
この街は「モンド」が建てられてから大きく発展を遂げた。もともと企業城下町としてそれなりににぎ
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