蛇音/よーすけ
に素早く自転車でもなかなか差は埋まらなかった。栗須は「おい待て」と思わず叫んだ。野菜を盗んだ事を咎めようという気などなかった。ただその少年がどういう奴なのかを知りたかった。自分に敵意がないということをどう伝えたらいいのか栗須は思いつかず、ただ導かれるようにして少年の後ろを追った。
滑稽な追いかけ合いは夕日が山の後ろに沈んでもしばらく続いた。少年は人通りがなく狭い道を走り続け、栗須でもほとんど知らないような場所まで来た。栗須は次第に少年に対して苛立ちを覚え、何度か捕まえようとしたが、追いつけなかった。シャツが汗を多く吸って皮膚に張り付いた。
「なんで追いかけてくるんな!」
少年は足を止め、振
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)