めぐり ふらす/木立 悟
木の内側に棲む蝶を
一羽の鳥がのぞきこむ
撫でられるたび
変わる冬
割れた石の階段の間を
雨が流れてゆく
破裂する水色
映る鳥
雪が雨を昇り
曇は曇をゆうるり動く
たがいちがいにつぎはぎに
音は光を振り返る
光と異なる光が走り
音に触れては曲がりゆく
遅く伝わる動き 動き
伝わるより速く過ぎ去る言葉
三つの窓が
石の道を照らし
暗がりは木のかたちに歩き去る
鳥を映した水たまりを飛び越えて
こぼれ落ちる互いの姿を
同時に影から引き抜くように
白から生まれるはざまのはざまを
坂から海へ流すように
向こう岸に
同じものがある
遠く
ゆらめいている
ほんとうに同じものなのか
影は
変わりつづけている
白湯の色をした
白湯の下の薄皮を
霧の音に差し出して
迷路を拡げる術を
訊こうとしている
天窓の夜
空には幻
地には一人
影ふらす羽を追ってゆく
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