夫の夏/長押 新
 
その砂を、踏むと、
足の裏が痛いでしょう、
チクッ、
チクッと刺さって、
彼ら、砂たちは、
一粒になると、
鋭く、
柔らかなビーチを脱いで、
それだから、
掃除機で、丁寧に、
吸い、尽くして、
しまわなければなりませんノ、
夏には、
赤い色だった夕暮れが、
すっかり、黄色に変わったら、
それが、合図ですノ、
ホラ、今日のような空の、色
もう、ずっと耳の奥で、
鼓膜に触れるか、
触れないか、
そんな境目で、夫の、
笑い声が、
聞こえてきますワ

オホホホホホ
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