改札/さつき
冷えた空を溶かすような、ほんのり柔らかい日差しを浴びて、通りすがりの駅のホームは、閑散とした微睡みの中にいた。緩やかに電車は走り続け、人々の頭も規則的に、右に左に動いている。
夏の濃い緑の匂いを思い返していた。時間からぽつりと取り残された園内、サワサワと葉を鳴らす木々、背中を伝って滴る汗に、体の線がいつもよりくっきり見えた気がした。もう3年以上も前のことだ。振動と共に通り過ぎる景色と、夏の日の匂いがぶれて、ふと目を細めた。ほんの1日の、過去の記憶。
気づけば、さっきより傾いた太陽は、変わらぬ穏やかさで、車内を照らしていた。スピードの落ちる気配に、膝に丸めた上着を羽織る。駅に到着し、深呼吸のような音でドアが開くと、乾いた秋の風がふわりと吹き込んできた。
微かに汗ばんだ首筋を拭い、いつもより遅いヒール音で、歩き出す。目指す改札は、1つだ。
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