私ごと/月乃助
 
男の話



浅くなった眠りの中で
蹄の音がしていた
となりで眠っていると思った男が
雌の鹿だといった

森の
そんな においのする男だった

神さんの住むという深山の
山間の里で
神も仏も気にもしない 男は、
そんな暮らしをしていた



女の話


女はここに 海の街からやってきた
亡くなった母の小さな家に身をよせ
この家をどうしようかと 思案にくれていた
家は古く 売れそうにもなかったし
母の荷物は 山のようにあった

女には、海の向こうに子供たちがいたが
子供は子供で好きなようにいきるだろうと、
勝手なことを想っていた
そんなこ
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