私ごと/月乃助
男の話
浅くなった眠りの中で
蹄の音がしていた
となりで眠っていると思った男が
雌の鹿だといった
森の
そんな においのする男だった
神さんの住むという深山の
山間の里で
神も仏も気にもしない 男は、
そんな暮らしをしていた
女の話
女はここに 海の街からやってきた
亡くなった母の小さな家に身をよせ
この家をどうしようかと 思案にくれていた
家は古く 売れそうにもなかったし
母の荷物は 山のようにあった
女には、海の向こうに子供たちがいたが
子供は子供で好きなようにいきるだろうと、
勝手なことを想っていた
そんなこ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)