ある初夏の日の身震い/
相差 遠波
段々畑に出る前の下り坂を
私服の人が五、六人
こちらを目指してきたようで
私に気付くと一様に
戸惑ったふうに立ち止り
すぐ間違えたかのように再び下る
もうすぐ夏になろうかという
晴れた休日の正午
何故腕を曳かれた一人は
暑くなりはじめた日差しの下で
ジャケットを両手で抱えていたのだろう?
もうすぐ夏になろうかという
晴れた休日の正午
この静かな山の中で
一体何が起こっていたのか
犬は満足げに
舌を出して笑っているだけ
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