オッペのひと/恋月 ぴの
 
結わえた年長の男性が短い感想など述べくれ

私は紅潮した面持ちで手招かれるまま古い椅子に座る
長年馴染んできたかのような手作りの椅子

果たして私は彼らに許されたのか

また遊びに来てくださいね

笑顔はあの落ち葉のベッドのように優しげであったとしても




桂木観音への急坂
ゆずの里らしく道の両脇にはゆずの黄色い実が鈴なりと生っていた

無骨すぎるほど頑ななゆずの素顔
それでも厚い皮の下には柑橘系らしいすっぱさが潜んでいて

雲の切れ間からのぞいてくれた初冬の日差し

「あと少しで」

息を切らした急坂の果てに訪れるもの

それはひとときの安らぎであり
目をそむけ続けた果ての惨い現実であったりもする










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