川沿いの聖堂/コーリャ
 
かったことにする陽の暮れ方や。恥ずかしさをだしぬけに与える夜の訪れ。かみさまに手紙をだしたはずだ。ワイン瓶の中で身を硬くする手紙。かもめの行き先。海岸の最果て。振り向いたときの表情。斜光。
そんなものたちを弄んだ両手が燃えている。


音楽が鳴り止まない。頭のなかに宿した海の。右耳の裏側。汀がいつも鳴っている。そのことにきづいたときから、僕たちは岸辺に閉じ込められていた。長い岸辺。広がる岸のどこにも、やわらかな砂にささったワインボトルなんて生まれない。城なんてないし、しあわせの国もない。波がなにもない浅瀬になじんでいく音をききながら。みとどけながら。燃える両手をどうすることもできず。彼岸の光をみつめながら。僕たちは。
僕たちを繰り返している。


知らない女が戻ってくる(あなたは戻ってこない)僕は冬の海に行こうと女を誘う。
女はひとつくびをかしげ、泳ぐみたいに聖堂へ戻っていった。

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