江古田家臍次第(えこたけへそのしだい)/salco
 
およそ百年前
大学二年の一人息子を交通事故で亡くした時
既に寡婦であった資産家の江古田夫人は
今度の悲嘆には到底耐えられないと思った
そこで息子のDNAを研究機関に預け
一年半後
スーパー多能性幹細胞で自己再生した
嬰児の息子を受け取った

ありし日の息と同じ息を
同じように育て直し
成人させ
六十七歳の秋
膵臓がんを発症して
およそ二年の闘病ののち没した


母の愛情を一身に享けて育った息子は
二十四歳になっていたが
この死別には到底耐えられないと思った
そこで母のDNAを*輪廻還生事業法人に預け
一年後
スーパー多能性幹細胞で自己再生した
嬰児の母
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