煤けた夜/ホロウ・シカエルボク
 



どす黒い流動体の官能的な変化だ、分類されなかったあらゆる感情を生のまま飲み込みながら、軟体動物の様なその姿を次第に巨大に膨らませ、中枢の重要なポイントに禍々しい液体で穴を開けようとする、欠陥を生じさせようとする…濡れた衣を床に滑らせるような足音がずっと響いて、内耳に耳鳴りの様ないやな感触をずっと植え付けてゆく、飲み込みながらうねっている、飲み込みながらうねっている…月の無い夜の黒い海の動きみたいに、暗い海の意志みたいに…冷たい風が頬を撫で、熱を奪ってゆく、ねえ、だけど、それは海じゃないぜ、そこで飲み込もうとしているものは、それは決して…海よりももっと致命的なものさ、そう、気が付いていな
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