三本目/根岸 薫
 

陽のゆらめくところ
わたしのくるぶしに
流れと温度がある
木陰にいる
水もある
沈む
木の上のほうへ
沈みあがる
すでにばらばらで
ある 長い
肉は、
海の水を掴んで
しかしそこにはもう
五本ともすべてなくなっている が
三本目だった部分の
反対側に
六本目が
微かに
見え、て、いる。
左右とも
浮かぶ 肉


   福岡はその日
   晴れていたし 七月で
   暑かったと思う
   『第七ビル』を訪ねた
   話を済ませ 礼を言い
   建物から出たところで
   T、がいることに気付いた
   家でわたしを
   待っていた
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