鈴月はしらない/たりぽん(大理 奔)
夏を忘れたように
川面は揺れています
秋柿色に灼ける西のほうこうに
知っているそらはありません
路面電車を染める透明や
季節を渡っていく雲も
映す川面を揺らす風
みんな、私の知らない後ろ姿
まるで
綺麗とおもってしまえば
見えなくなる
うつむいた三日月の
照らされぬ昨日です
雨の日はあの鏡も
濡れるのでしょうか
季節の雨雲のむこうで
怒りや淋しさに似たひとりぼっち
そんなものに濡れるのでしょうか
誰にも見せることのない
その滴を胸に流して
月だっていつか生まれたはずです
誰にも知られることない闇夜に
だから、いまだに
私の知っている月はしらないでしょう
あなたはそこに
そのまま在っていいのだと
在ってほしいのだと
見上げたそらに姿を探せずに
淋しさや虚しさにこの頬を濡らして
誰にも知られずに叫んだ
その言葉を
月は知らないのです
戻る 編 削 Point(6)