玉蜀黍/
草野春心
顎鬚をたくわえた男が
布を手に玉蜀黍を磨いている
小屋の外に置いた籐椅子に座り
一心不乱に
遥か上の方で青空が
ずっと前に動きを止めたことを
男は知る由もない
柔らかな布がくたびれると
新しいものと取り替える
風が糖度を増してゆく
あらゆる恵みはここにある
男は満ち足りた微笑をたたえ
その手の中で玉蜀黍は
きゅっきゅと幼い音をたてている
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