御伽話その2〜優しい傷跡〜/永乃ゆち
キスを
繰り返しながら
世界を騙してる
罪深い二人だ。
私は。今年で50になる。
結婚の経験はない。
いつだって一人だった。
それが心地良かったから。
気が付けば。
こんなに年を取っていた。
大学で物理学を教えている。
寂れた初老の独身貴族。
彼女は私の教え子だ。
結婚した後、向上心に目覚めた
(と彼女が言っていた)
らしく、大学を受験したそうだ。
彼女は少し、変わっていた。
「気難しい」
で通っている私に対して、
いつも笑顔で馴れ馴れしく話しかけてきた。
まぁ、後にそれは彼女の性格と判明するのだが。
彼女が初めて私の講義を受けた時
いき
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