物語?半物語?物語/葉leaf
 
0.はじめに

 廿楽順治の詩集『たかくおよぐや』(思潮社、2007年)を語るには、その規範逸脱の仕方やモチーフの特殊性に言及するのが恐らく適切であろう。閉ざされた空間ですべき愚痴や否定的感情の吐露をおおっぴらにやることや、括弧内の部分を前の部分ではなく後ろの部分に接続することの規範違反性。人間の変形や喰い物、感情的批判というモチーフ選択の特殊性。だが、私は、廿楽の詩の構造や行為の特殊性を指摘することで、議論に幾分の抽象性を持たせ、他の詩人を論ずる際にも役立つような批評を試みてみたい。廿楽の詩がどのような構造を備え、どのような行為をなしているかを語るためには、何らかの基準との対比が有効である。
[次のページ]
戻る   Point(4)