壁/アンテ
じっと動かない人がいます
ついにだれもいなくなって
静かになって
足がくたくたになった頃
果てまでつづく石壁が現れます
人ひとりがやっと通れる穴のまえに
番人がいて
石を積む作業を止めて
仁王立ちになります
全力でぶつかってもびくともしません
しかたなく
石壁を拳で何度も何度も叩いて
ようやく外れた小さな石をひとつ
拾い上げて
中心をめざして引き返します
遠い彼方
人が点在しています
振り返ると
番人はなにもなかったように
穴の内面に石を積み上げています
それもやがて見えなくなります
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