ねじれてゆく鴇のアンテナ/北街かな
 
まるで血まみれの鴇のような声で
孤独だ と、誰かが叫び飛ばしていた

夕陽の爆発を朱の線形で切っ裂いて
斜めに山岳をけずりとり
ふるえ滑り急落下して球形に飛散し
電波慰霊塔の涙時計をかち割って
脊髄のまんなかを通りぬけながら
錆びた線路に伝導していった

あの叫びは
何に似ているだろう

初めての夏の日の告白と返答のようだと思った
真夏が脳をバラすときの耳の裏側の亀裂音のようだと
自転車が壊れ
繋いだ手が離れ
何度も深爪をして
呆れるほど接近し
言葉をていねいに紡ぎあって
真夜中の下水道に隠れ
泥川のシャワー音に目を閉じて
たったひと夏の愛情と
生命起
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