河口の地図 2011/たま
い祖母であった
夕飯を食べおえると
祖母はりんごを剥いてくれた
外はまだあかるく
だれかが紙芝居の拍子木を
カチカチと打ち鳴らしてあるいている
一切れのりんごを手にもって
わたしは路地に飛びだした
紙芝居のおっちゃんはいつも
土手のちいさなトンネルの入り口に
自転車をとめて
黄金バットをみせてくれた
茜色の夕陽を浴びてはしる電車は
大門川の鉄橋を渉り
わたしと黄金バットの頭上をこえて
北の空に消えた
2)
大門川と二本の鉄路が交差した
三角地帯に三十軒あまりの民家が軒をかさねていた
祖母の家族がいつのころから
その一角に住みついたの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(28)