夜めぐる水 ?/木立 悟
 




雷雲の底
海に接する光
雷鳴 水紋
耳の底の湖


階段で
手のひらをあわせ
窓の外の音を見る
青を描く金を見る


水のなかの糸
ふかみどりに混じり
たぐり寄せた先の
不思議そうな笑顔


暮れは流れ
川岸は背の影
ゆうるり曲がり
果てを隠す


かかとに生まれた水たまりが
咽のかたちに触れたいと言う
熱い壁の外側
海に近い星


笑顔はりんごを待っていた
けれども数が足りなかった
割っても割ってもいきわたらない
手のひらの雨 ひとりの雨


読めない文字で覆い尽くしても
会いたくない願いは叶えられず
紙の骨は降り
りんごを隠す


冷えた細い鉄格子
何を待つでもなく震え
渦の傾き
夜の傾きを見つめている



















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