バーについての記憶/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
で差して声を上げる女もいた。もっとも、見るからに厚化粧のろくでもない感じだったので、ガン無視で事は済んだ。
覚え切れないほどいろいろとひどい目にはあったが、過ぎてしまえばただの物語だ。もう事項としてしか、認識はされない。
そのうち話も途切れ、静かに飲む。
いつのまにかテレビはWOWOWの、音声を任意に消したであろう字幕映画に切り替わっていた。
友人はあいかわらず屈託のない笑顔で酒を楽しんでいた。わけあって今年東京に出てきた彼だったが、その時は所持金も少なく、苦しい生活だった。
それが今では、平和に、そして気軽にバーにも行けるようになった。
そのことを思うと、ただよかったなあ
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