夜めぐる水/木立 悟
三つの影の
ひとつには羽
見えぬものの傍ら
口笛を吹く
道は森となり
曇の花 泡の花
原めぐる川
降りつづく雨
はじまりの雨
風をくぐり
風をくぐり
いつのまにかもどり
夜をかき分け
左を埋める傘をよけ
沈んでは浮かぶ
小さな荒れ地
鉄の音 羽の音
握っては離す
滴の音
曇が降りてゆく丘を
曇が来るほうへ昇る
原と崖が鳴る
置き忘れられた
むらさきの曜日
羽をたたみ
枝にとまる雨
とまる音 とまる音
落ちることなく
降りつづく影
石の墓を蹴り
光は還る
渇いた夜の 一瞬に満ち
葉の指わたる
新しい虹
蒼を見つめ 岩は眠る
横顔とうなじを浸す波
灰はあつまり むらさきになり
見えぬものとの隔たりを染める
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