秋空のひと/恋月 ぴの
 
どこかで誰かが泣いていた

悲しくて
それとも恋しくて




悲しさに理由なんていらないけど
流した涙はしょっぱくて
それでいて仄かな甘さなんて感じてしまう

なぜって
切羽詰っていないから




秋の空は青く

確かめたわけじゃないけど
わたしの体のなかを流れる血の色は紅葉みたくに赤いらしい

損得勘定以外の何かで
あなたとわたし
つながっているはずと思いこみたくて

時には投げつけられた言葉に

傷ついて
涙なんか流して

それでも沈黙を取り繕うと発した言葉は

つまんないドラマの台詞みたいで
ひとときの悲しさに酔いしれていたかっただけの自分に気付く





風が泣いている

もうそんな季節になってしまったと
前髪をかきあげ

襟足寒さ感じるかなとか
長い髪切るって決めたとたんに迷いだす





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