秋空のひと/恋月 ぴの
どこかで誰かが泣いていた
悲しくて
それとも恋しくて
※
悲しさに理由なんていらないけど
流した涙はしょっぱくて
それでいて仄かな甘さなんて感じてしまう
なぜって
切羽詰っていないから
※
秋の空は青く
確かめたわけじゃないけど
わたしの体のなかを流れる血の色は紅葉みたくに赤いらしい
損得勘定以外の何かで
あなたとわたし
つながっているはずと思いこみたくて
時には投げつけられた言葉に
傷ついて
涙なんか流して
それでも沈黙を取り繕うと発した言葉は
つまんないドラマの台詞みたいで
ひとときの悲しさに酔いしれていたかっただけの自分に気付く
※
風が泣いている
もうそんな季節になってしまったと
前髪をかきあげ
襟足寒さ感じるかなとか
長い髪切るって決めたとたんに迷いだす
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