朝の孤独/
花形新次
なに鋭利な刃物だって切り裂くことは決してできないのだ
車窓から見える風景はいつもと同じようにわずかに霞んでいた
そしてそれは俺自身の脳に張られた一枚の薄膜の所為だということも分かっていた
俺は変わらない
俺の孤独はこの朝のままだ
あと十数年はきっとこのままだ
諦めとは言い切れないどちらかといえば必然とも言える結論が
俺の最終的な弁明だ
次の駅で乗って来て俺の前に立った女性が
長澤まさみに似ていた
孤独は一瞬のうちに相模湾に消えた
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