朝の孤独/花形新次
部屋を一歩踏み出したときから孤独は纏わりついてくる
貧相な湾と丘陵に挟まれて
身動きが取れなくなったこの街に漂う霧のように
湿っぽい感情はいつまでも俺の皮膚から離れない
東京行の駅のホームには
いくつもの不信の影が立って
電車が来るのを後向きの姿勢で待っている
およそ12時間後にはもう少しはっきりとする輪郭も
今はひたすらぼんやりとすることに徹している
覚醒せよ!と叫ぶのは自由だ
しかしおまえは自分のバックパックに詰め込んだ延棒を
増やしたり減らしたりするために
他人を利用しようとしているだけではないのか?
何十年もの間熟成させた鉛の放つ重い空気は
どんなに
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