ケンタッキーフライドチキンを食べた夜は/木屋 亞万
 
敵が残した傷を腹の内に抱えながら
なおも俺の戦いは終わらない
水を入れた鍋の中にあの鶏たちの骨を放り込む
ダシをとって冷蔵庫で待機している中華麺のスープとするのだ
戦いの疲れを癒しながらほどよく出汁の出るのを待ち
ザルで漉したら首を長くして待っていた麺を入れ
出汁諸共に喰らってしまう
その香りの芳しさ
味の美しさたるや壮絶な戦いの締めくくりふさわしい
そう〆のラーメンである
不健康の極みと引き換えに食欲の解放される夜
死にゆく鶏の残すスープは図らずもやさしい味がする
あのあばら骨の細さを見るに
鶏たちはまだ子どもだったかもしれない
それならば欲に任せて大人気ないことをしてしまった
若くして散った鶏の命を思いながらごちそうさまと手を合わせる
こうして俺のとりの日の夜の戦いはようやく幕を閉じるのである
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