空の子ハイヒールは海に溶けぬ/ayano
 

砂にはまったヒールがおかえりと叫んだ。父親の浚われたあしを探す髪はただいまとうすく笑った。むかしから、彼女の大切なものはすべて海に溶けてしまったけれど、きらいなものは削れ丸くなることなく居座り続けた。
サイズの変わらない木々や波音に消された声を沈めることができないのは、何マイル経っても主と交差しないから。




わたしと海
おとうさんと作ったしろいハイヒールはいつの間にか赤く、海はより一層の青さを増した。海もわたしも自分が青褪めるのを感じながらハイヒールの染色から目を離すことができなかった。後ろに立ってるおとうさんのくたくたの服の裾を握りしめて動けなかった。


おとうさ
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