揺曳/伊月りさ
りんごににてるね
かわいいね、おかあさんいなくなっちゃったんだ
あ、ちいさいきつねのこえかも、りこん、りこん、
ちいさいきつねはさびしいんだね
ひとりぼっちだから
夕方の欠片に
切り裂かれていく
きみは だれも触(さわ)れない骨の裏側
静寂
手の甲に刃を立てられても
手の甲が赤い網目のようになっても
優等生のようにじっと腰かけて
皮の裂ける音も
血の滴る音も
させず
にぃっこりしておくの、
わからないのだもの、これが
切られているのか、
つながれているのか、
証明できない、
と たゆたう
きみの周囲にできるかすかな波紋だけ
わたしに語っている
ような気がして、
肋骨の奥
さざめく
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