これは懺悔ではない。/安樹
苦しいのです。
誰かがなにげない一言で私を傷つければいいのに。
誰かがうっかり私を死なない程度に撥ねればいいのに。
誰かが私を忘れてしまえばいいのに。
誰かが私から金を奪いとればいいのに。
誰かが私に愛憎を抱けばいいのに。
誰かが私の全てを裏切ればいいのに。
そうして私と同じ十字架を誰かが背負えばいいとさえ思います。いわば罪の擦り付け(なすりつけ)です。
ああしかし、その全てが叶ったとして、決して私は赦されないし、満たされないのです。
いっそ首を括りましょうか。しかしそんな事をしたら、私の罪はますます重くなるだけです。
もう、もう何も分からなくなりました。
母が仕事から帰ってきます。
その前に、私はこの不毛なひとりごとを締め括ろうと思います。
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