これは懺悔ではない。/安樹
産まれてこないほうがその者のためによかったならば、なぜ私は産まれてきてしまったのでしょうか。
私の罪は消えません。
私は見知らぬ子を傷付けました。
ああ、それは紛れもなくその子の勘違いなのです。
私が空に放った罵言を、彼は純粋ゆえに空に言葉を放つ阿呆(あほう)など知りませんでしたから、彼はそれを自らに放たれた言葉として受け取ったのです。
ああ、それはあなたの勘違いです。違うんです。
私は見知らぬ老婦を傷付けました。
ああ、それはどうしても避けられぬ出来事だったのです。
塀のそびえる曲がり角で、私は彼女を轢きました。
ああ、笑顔で許さないでください。
ああでも、
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