白文鳥/乾 加津也
 
濾される奇声は嘘の祈りで
ほんとうになりさがるだろう

夏を呼び
白をあびる
逞しい工場のような人が
開いて見せろ
皺のないわたしから開かれる十本の塔
たち昇る色とりどりの蜃気楼
こんどはわたしが
小さなものたちの
手まねきを憶え ぬくもりを数える国土となる
握りしめればアクリルの音がして
そのままわたしの
うまれたての眩しさ高原まで
屍までの時間をかけて
横たわる
まっすぐとは
このこと

あのとき
あの場所から走れなかったわたしのとうめいに
なだれ込んだ
傷だらけの
匂いのこと

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