根津界隈/salco
 
ない墓石なのが実に象徴的と思われた。生きている時間、生きてい
る人間というのはかくの如しだ。常に、今しかない。今にしか佇めない。
 「灰は灰に、塵は塵に」。これもファンタジーであって、死ねば微塵で
さえない。骨壷の遺灰も雨水や蒸気で黒く液化する由。大方は残存記憶の
収容器でしかない主体にカレンダーや腕時計、通信機まで携え気休めとす
る滑稽が身に沁みた。

  
        森鷗外記念室は改築の為、現在休館中。
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