花蝶陽月/たちばなまこと
 
台詞が浸透する
蝶じゃなくて花なんだ
月じゃなくて太陽なんだ
生活に懐かしい呼吸が舞う

遠くから見守っていた蝶が
夜のとばりのつぼみにとまる
戯れながら休息を得たなら
朝日を浴び 光をまとい
白い月をひらく

太陽から見る月はいつも満ちて
丸さに水をたたえている
左胸のクレーターを幾度も撫でる
望まない戦に傷を負った
肌に 金を継ぎたい

新しい月 もっとも近づく ともしび
予告が満ちる三日月には
あつくなった素肌を見せて
くらやみに輪郭をなぞる
かたく引きよせ合う くるしく
深くいかりを沈め
ながい月日の思い出が降る
なまえが降る
互いを静かに
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