コーラル/Lily Philia
 



八月の森のいちれつは
空や雲や水平線がつらなって
やがて終わりの景色のなか
白い波の輪郭にしずんでいった。
泡と光をとじこめて
ヤギの背中のようにあたたかく
そして
引き返せないところまで
あたしを連れてゆく。

似たような夢を何度もみる。
だけどあたしは
だれかを思い出して泣いたりはしない。
アマリリスの茎のように
ひっそりと冷たくしていたい。
なにひとつ選べないまま
思い煩いしゃがみこんでいたい。

夏の暗いところへと
八月の森は逃げてゆく。
手をのばしても
もうぜったいに届かない。

その人のなまえが
南の島のコトバだったらいいのに
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