オイフォリ/Lily Philia
 



だれかが天上から
そっとオールをさしいれてくる。
凪いだ水面のようにしていた雲はしずかにわれ
そこから幾本にも分かたれた
まばゆいばかりの光の束がおりてくる。
はじまりは右のオール。
おしまいは左のオール。
守られていた静寂の庭に
しろくちいさいものたちがせわしく
等しい距離と距離のあいだで明滅をはじめる。
オールが動かされるたび
のいばらの白い花束は点々と結ばれ
そうしてほどかれてゆき
白くかわいた道には
音のないキラ雨と反射だけが揺れている。
あの日の砂浜よりも白い
熱い砂の地面をふんで
あたしは灯り揺れている光溜まりを
片足ずつ慎重に交互に飛び
[次のページ]
戻る   Point(3)