遺産/乾 加津也
だれのものか
だれもしらない
島の ちむは
たましいの遺産
戦世(いくさゆ)でも
混血でも
総決起でも
珊瑚あたまのガジュマルが
三線片手に汗かき鳴らして
愛しく
ときを逆なでする しおさいをききに
浜辺にでようと アダン越し
ヤドカリの爪は砂面をこそぎ
ただそれだけの島のはずだが
にへーでーびる またん
ちゃーびらやーさい
垣をぬければ
どすんと落ちるあかね雲
これも失せない おまえの花園
わたしのほほにも
あなたの瞳(め)にも
*ちむ=肝(きも)
*にへーでーびる=ありがとうございます
*ちゃーびらやーさい=伺います
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