渦潮/伊月りさ
わたしであり続けるため
お台場からフェリーで
この島は
信頼性の高い科学データのような群集
歩幅が広いのか
縮尺が変わったのか
積み上げてきた言葉を
あっさり受け渡してしまいたくなる
きっと
あの沿岸一帯にも
おなじ潮でべたついた
洗濯物や
髪や
ふれあいや
歴史が埋まっている
その上を
歩んでいかなければならないと
法制化でもしなければ
つむった目を開けないのはわたしだけではないはず
週末
お台場からフェリーで
知人がやってくる
その時にはまっすぐに
渦潮をみせたい
多数決の果てに横たわる真っ白な大橋のたもとに
わたしたちの生活をとかして
浮き上がらせて
青磁色の大輪を咲かす
その根は ずっと 北の水底に張りついて
震動を感じながら
だれが水をそそがなくとも
明日をみせている
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