ふるえ 水彩/木立 悟
ひとつの文字が
道のかたちに並び
燃えている
坂はゆるやかに
岩へのぼる
路地と声
石と石をつなぐ黒
火と空を映し
水は水の上を
歩みはじめる
横からの雨
ちぎれば羽
近づけば遠のき
いつのまにか後ろにいるものを
手鏡で確かめながら
下へ下へ 洞は降り
あちこちで小さく
海は終わり
酒は神の秘名
門に置かれ 消える
花を知らぬものが花を育て
人になった
話しかけられたものらは口をつぐみ
夜だけが近づき 傷ついた
降る音の影を追い
霧を掻いた
倒れた標が土となり
道が道でなくなったあとも
招く手が招きをやめることはなかった
目を閉じ
目を閉じる前に見たものを放つとき
曇はむらさき
傷は金のまま吹いてゆく
波と光はぶつかり
街は消える
歩みつづける音だけが
道を路を径を照らす
かつて居たものの 跡を照らす
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