アラジン/salco
 
動を抑え
風上へゆっくり大股に歩く
川の臭気が鼻柱隔をくすぐる
彼方の鉄橋を
黄色の電車が長閑な音で渡って行く
日射しを遮るものがないせいか
早くも額が汗ばんで来た
デザートブーツの尖で踏んだ小枝を拾い上げ
ブーメランの要領で投げてみた
案の定、風に弾かれ惨めな落ち方をした
と、草むらに白いものが横たわっている
動物の死骸か。
どきりとしたが、近付けば艶々と
和式便器だった

工場の跡地ででもあるのか
いや、1つということは誰かが捨てたのか
汚えな。
これが唯一の感想だったが
それは失われた用途のせいで
底面の無い便器はフレームように繁茂を囲い
まるで洗い
[次のページ]
戻る   Point(6)