荒野の白袴/木屋 亞万
この世の全てに
意味があるとして
それが何の救いとなろう
泣くことが最初の呼吸であるならば
そこには一滴の悲しみもなかった
暇に溺れ
退屈過ぎて
息ができなくなった時に
泣きたくなるのは
息がしたいからだ
孤独は死に至る病だが
病は
死への階段で
死へと飛び降りる必要を失くしてしまう迂回路
それもまた容易い道ではない
どのような死も
心臓の停止とともに完遂する
心不全
心は最後まで不完全なまま
肉体から揮発していく
物心のつくとき
心が産声をあげるのは
恋をした朝
幾度となく予兆を味わい
これが恋かという衝撃に堪えながら
いずれ
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