童貞論序説/天野茂典
 
さか溺死しようはずはないが 草を
   吐き出すことは無理だろう 体は洗うが
   内臓までは洗えない 喉に草をつめたまま 
   これからも生きてゆくことになるのだろう
   大学の校舎は暗い 反対側のひくいやまは
   たそがれている カラスが一匹ないて去った
   啄木は言った 詩は芸術でなくていい
   ばらばらでいい
   まとまったものでなくていい 日記のような
   ものでいいと 温故知新 いま啄木ぼくは
   石鹸で泡だらけになりながら ひそかに
   河童になってやれ 童貞なんだよ
   頭のシャンプーどうしよう



           2004・11・23
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