七月のこと/DNA
 
していた。
友人は永遠に終わりそうにもないプロ野球のゲームに勤しみ、その傍で、
私はかれの書いていた小説を読んだりネットサーフィンをしたり、これまただらりだらりと時を過ごした。
かれの野球ゲームの行く末にいちいち言葉をかけたり、急に小説の感想を述べたりして
かれもかれでゲームに熱中しながら無駄に律儀に応答していた。

七月の同じように蒸した部屋では、そのベランダにおそらくは
引っ越しのときに用したであろう白い発泡スチロールが捨ててあった。
私が懐かしく想いまた、ほとんど愛しいとも云えるのはその、白い物体が、風に浮かされひらひらと舞っているさまだ。
何故、そんなものに執着を示すのか我ながらよくは解らないのだが、あの白さがひらひらと舞う光景を想い出しては、
友人とその数日間交わしたやりとりがすべて蘇ってくるような気がするのだ。

いま、別の他人の家にて、ベランダには割れた鏡台が置きっ放しにされ、開け放された窓から夜気が忍び込んでくる。
数年後の七月、私はまたもや他人の家にいて所在なくこの光景に想いを馳せるのか。

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