きれいなうた/faik
 
ったのです
確かに、確かにあったのです


浅くも永い年月のなか
喪失を知り、残酷を知り
怯えるという感覚を知り
そこから生じた数多の感情が
息吹き、根を張り、巣を食い
ばばばと咲き乱れた頃には、もう
すっかり隠居した後だったのです


けれども、貴方。
親愛(いと)しい貴方。
それは今でも、私のどこかに
確かに居るはずのものですから

探してくれ、とは言いません
助けてくれ、とも言いません
以前ほど強がらなくなった私は
恐らくそれすら望んでいません

ただ、そういう素直できれいなものが
まぬけで不埒で黴っぽく
拙くてジメジメでネチネチしたこんな私にも
確かにあるのだという自慢話を
とりとめもなく語り始めた今日の右脳に

まるで気のない相槌と
てんでんばらばらな閑話休題で
安らかな沈黙を与えて下さい


いつものような、簡単な顔で。
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