剥がれた屋根の歌/竜門勇気
 
町からずっと遠い場所で
朽ちた家を買って
暮らすことにした
灰色の屋根と毛羽立った床のある風景

どうやったって
取り返せないものが
あんまり遠く小さくなったので
僕は自分を騙すのをやめた
自分に騙されてやるのもやめた

インチキ臭い家具屋で
テーブルとロッキンチェアーを買ったら
もう金を使うあてもなくなった
缶詰のビールを投げ出すぐらいの空間があれば
もう部屋の片づけすらしないでいい

世界の果ての丘は
僕の言葉でいっぱい
良かったこと嬉しかったこと
あと 少しだけの泣き言をこぼしながら
静かに生きていよう

板壁は荒れに荒れて
隙間から訳の分から
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