[初恋の日]/東雲 李葉
より心に近く。
黒板の前で口を開くより喉が乾いて。
新しい病かとさえ思っていた。
愛なんていう言葉は、
テレビの向こうで台本通りに囁かれるものであり。
はやりの歌の中、ローマ字と変わらない意味で口ずさまれるものであり。
する、とか、しない、とか考えたこともなかったのに。
うねった黒髪も、カップをくゆらす指も、皮肉な口元も。
全部全部ぜんぶ。
気がついたら倒れていた。
落ちていく先はもうない。今はこのまま溶けて滲んで広がるだけ。
指と指で交わるたび。口と口で交わるたび。目と目で交わるたび。
じわりと滲んでどこまでも広がっていく。赤く。濡れる。熱く。
初めてはぜんぶ君に教わった。
初めてはぜんぶ君に渡した。
初めてはぜんぶ君だけに。
まるでシートベルトのないジェットコースターのようだった。
予測できない落下地点のどこにだって僕は君の姿を見つけた。
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