秋冷/千波 一也
く思い知る
空の高さ
覚えることは
忘れてゆくこと
くじけることは
立ち直ること
うたがうことは
願うこと
すべて世界は
簡単なことのはずなのに
わかろうとして
わかろうとして
わからなく
なる
風の
むこうの
ささいな影が
なぜだか妙に懐かしいのは
風に
時間が
とけているから
消えるものなど
ありはしなくて
みんな
姿を変えるだけ
風に
姿を変えるだけ
車窓からみえた
数羽の白鳥
つめたい風に
ああしてきれいに
抱かれるまでに
どれほど
痛んできたのだろう
どれほど
癒されてきたのだろう
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