師匠、僕は今、案外と幸せです/桐子
 
ように

2人は山を幾つも越えて
険しい山を幾つも越えて
荒れる海を越えて
荒地も草原も越えていった
肥沃な大地も越えていった

最後から2番目に辿りついたのは
僕の故郷
最後の最後に辿りついたのは
師匠の故郷 だった

師匠の故郷に辿りついた段階で
師匠は弱っていた
翌日、気付いたら師匠は死んでいた
僕は緑色の詩を握りしめながら
墓標の前に立ち尽くした
しかし、なんだかんだ言って
僕もだんだん年を取るのである

橙色の詩のことを思い浮かべつつ
僕も今、死の床の上にあって
師匠も死ぬ時、あんな渋い顔をしていながらも
実はけっこう幸せを噛み締めていたんじゃないかな と
勝手に自分と重ね合わせながら
思いを馳せ
ひっそりと笑った
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